【 – Aria – 】(Blute nur, du liebes Herz!)

【 – Aria – 】(Blute nur, du liebes Herz!)

F20( 727 × 606㎜ )  oil on canvas

2024.May

夕方になって、イエスは十二弟子と一緒に食事の席につかれた。

そして、一同が食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。


マタイによる福音書 26章より

タイトルはバッハの「マタイ受難曲」の『ユダの裏切り』の場面から。邦題では「血を流せ、わが心よ!」と訳されている。Aria(アリア)は聴かせどころとなる曲、作品のサイズ的に10月のpragmata企画においてわかりやすく目をひくひとつにもしたいと思っていたので。

この絵の元ネタはLeonard da vinciの壁画作品「最後の晩餐」。2019年にイタリアへ行った際、帰りのマルペンサ空港で最後の晩餐をオマージュした彫刻作品を見ていつかやるかもなという思いがあった。今回はパッと見てわかるようなhommage作品とはしなかった(それやったらちょっと違うかなと感じたので) 。

左からバルトロマイ-青リンゴ、小ヤコブ-リンゴ、アンデレ-りんご、イスカリオテのユダ-レモン、ペトロ-無花果、ヨハネ-無花果、トマス-りんご、大ヤコブ-無花果、フィリポ-青リンゴ、マタイ-青リンゴ、ダダイ-りんご、シモン-グレープフルーツに当て嵌めている。

リンゴ、青リンゴはそのまま罪の意味、それが7つで七つの大罪とかなんとか。

ペトロ、ヨハネ、大ヤコブの3人は特にイエスに近しい存在。アダムとエヴァが身体を覆うのに用いた無花果の葉ということで知恵の実は無花果だったのではないかとも言われているこの果物は、「強い生命」「繁茂」の根源、「精力」を意味する。

一番右側にはグレープフルーツ、これは最後の晩餐の食卓上にはレモンとオレンジが並んでいたとされるため当初はオレンジをと考えたが、グレープフルーツの学名がCitrus paradisiというらしく、paradiso天国を思わせるもの、救いにも似たものを描く必要があった。

中央のイエスの位置にはザクロ。ザクロは多様の中の統一、愛、不死、豊穣などの意味を持つ果物。死と復活の意味を示すザクロをイエスの位置に据えるに適っていると感じた。

最後にイスカリオテのユダ、通称裏切りのユダと呼ばれるこの人物の位置にレモンを据えた。黄色はユダの色(黄色は欧米では腰抜けや卑劣を意味する)。そのため黄色の果物、その中でレモンを選んだのはまず個人的に好きだったから。この作品の中に自分を投影するとしたらこのレモンだろうと思う。レモンは悲嘆や苦い理想、嘲笑、熱狂、楽しい思索、慎重などの意味を持つ。

ユダはイエスを裏切り銀貨30枚を手にしたと言われているが、それが本当なら自らキリスト教の印象を落としているにすぎない。弟子として教えを受け行動を共にした人物が、銀貨30枚のために簡単に裏切るような薄い信仰、人の命より金銭の方が重いと言っているようなものだから。エピソードにするにはちょうどいいのかもしれない、向こうから見れば裏切りなのだろうけれど、ユダサイドから見たら全く違った意味合いであった可能性もある。物語には悪役が必要だという点において、ドラマ性のあるエピソードとしては相応しい。三国志でも蜀にとっての魏は大悪役として描かれる。人をどのように見るかは難しい。

 

ここからは個人的な話になるが、今年華やかな場に招待されたことがありました。結果的には断ったのだが、絵を描くためには人との関わりを断つ/距離を置かなければ絵は描けない。向こうサイドからの印象は悪く映っているに違いないが、仲良くしているだけでは/他者の時間軸の中に取り込まれたままでは自分の番はいつまでもやってこない。理解しろと言っても相手にはわからないと思う。人付き合いのない私にとってそれなりに良い関係だった分苦しいけれど、絵を描くためには仕方のないことだと思っている。これからはそれを理解してくれる人と付き合い関わっていくことができたらいい。

これらの話と同じで、いつまでもくだらないものに付き合っている必要はないと思っている。何をとは言わないが。あまりにもお人好しがすぎるというか、本当にこのままでいいと思っているのか。


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