『悪と正典』 小川哲 著
随分前Podcastで「文学賞メッタ斬り」を聞いていた時にこの前作である「王国のゲーム」だったか、それを取り上げていてその頃から気になる作家だった。調べてみたら同い年のようで尚更気になった。この「悪の正典」も同Podcastで取り上げられていたような。最近では直木賞受賞の「地図と拳」や最新作の「スメラミシング」が話題になっている。
いくつかの短編から構成される内容で個人的には「魔術師」「ムジカ・ムンダーナ」…いや、読んでいる時はいくつか印象の薄いものがあったのだが、読み終えてからは全て良かったという印象。その中で選ぶとしたらやはりタイトルにもなっている「悪と正典」が最も長編であり強く印象に残る面白い作品であったと思う。
同い年の活躍に目を向けるのはこれまであまりしてこなかった。最近になって世代論への興味を持ち、過ごした場所は違えど同じ時間を過ごし同じような影響を受けているのかということを、そして自分と共通したものがあるのだろうかが気になった。絵に於いても世代によってまるで違って見える。上の世代と下の世代の感覚は大きく異なり感じられる。特に世代全体か私だけのことなのか、もっと上の世代はパリに憧れを持っていたようだが私はそれを持っていない。カッコつけてなんぼのような時間を過ごしていないなどギャップがあるのでやり取りには注意が必要だったりすることもある。価値観の違いというのは意外といろんな面に影響を及ぼす。
世代論についてはこれからも静観していきつつ、作品にも反映させていくことができたらと考えている。小川哲の著作についてはもっと読んでみたいと思う。
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